食べるためにいちから作る喜び

私が生まれ育った函館は、海に囲まれた浜の街で
周りには畑や田んぼ、山も近くにない環境です。
団地暮らしで両親は共働きの核家族。
育った環境と、アトピー体質のせいか
私は、採れたての野菜や果物、体に良いと言われる無添加の食に
いつの間にか興味を持つようになりました。

進学で秋田に来て、田んぼと畑が広がる景色に感動し、
さらに田舎に移り住んで、同居する主人のおばあちゃんが
畑仕事や花の世話、山菜採り、梅干し漬け、漬物づくりを
している姿を見て生き生きとして楽しそうだなと思ったものです。


そして今年の冬。
マタギの里で知られる阿仁の漬物文化を伝える冊子を作りたい
という仕事の話しが偶然私のところへ舞い込み
秋田の田舎ならではの食に興味がある私は
運良く取材させてもらうことができました。
どんな作り方で、阿仁の人達にどんな食文化があるのかワクワクしながら

1月から2月の真冬の阿仁へ毎週通うことになったのです。


大まかに漬物完成までのストーリーをまとめると…
夏の終わりに大根、かぶ、白菜などの種を蒔き、
秋の終わりに収穫し、洗ったり干したりした後
大きな樽に何十本の丸ごと大根と、大量の塩、砂糖、酢などをぶっこんで
(ちょうど「ぶっこむ」という言葉の響きが当てはまる感じ)
重い石をのせ、時々混ぜたり世話をしながら1ヵ月で食べごろになり、
3ヵ月くらい保存ができる。というもの。
畑で野菜を作るところから考えると、
とても手間ひまがかかっているのが分かります。
子育て中、働き盛りの私たちにはとても真似できません。


そしてお母さんたちは、なぜか皆さん興奮しながら漬物を漬けます。
それはたぶん、漁師さんが大漁の時、農家さんが豊作の時と
似たような感覚なのではないかと思うのです。
「美味しいものをたくさん作り蓄える」という行為に
人間という動物として興奮するのではないかと。

この「作る、食べる」ことに関しての興奮は
どうみても楽しそうなのです。

大昔の人間は、衣食住のために暮らしていて
魚を釣って、家畜を育て、野菜を作り、
着物を縫って、籠を作り、火をおこし、料理を作る。
衣食住の仕事に勤しみヘトヘトになって1日が終わる生活こそが
幸せなのではないかと、楽しそうなお母さん、おばあちゃんたちを見て
思ったのでした。






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